「湿潤療法」

2014/05/16

陽気が良くなってくると、子供たちが屋外でからだを動かす機会も増えてきますね。そうした時に気をつけたいのが、ケガやキズ。そこで今回はキズの治療法について集めてみました。


私たちが子どもの頃、キズの治療法はキズを化膿しないように消毒し、薬を塗り、ガーゼを当てて乾燥させてカサブタを取る治療(乾燥療法)をしていました。が、近年は消毒をせず、ラップなどで傷口を覆う湿潤療法がスタンダードになってきています。


湿潤療法は、からだが持っている力を生かす治療方法。けがをして傷口がジクジクしてくると「傷が化膿した」と思いがちですが、実は、傷の直後からにじみ出てくる浸出液には、傷を治すために必要な成分が豊富に含まれているのです。湿潤療法ではこの浸出液で覆うことにより、傷口の細胞の増殖が促され、組織が活発に再生していきます。それによって、痛みも少なく、早くキレイに治すことができるのです。


なぜ、消毒はよくないの? 傷口の細菌を殺すために消毒すると、細菌よりも人の正常な細胞の方がダメージを受けてしまいます。消毒をすればする程、逆に傷を深くしてしまいます。水道水でキズの周囲を洗い流したり、水に浸したガーゼで拭いて、砂や汚れを落とすだけで十分だと言われています。


ただ、湿潤療法が普及してきたことから、その弊害も報告されています。 まず浸出液が多すぎると、患部の湿度が高くなりすぎて、細菌の繁殖も活発化する環境になります。体力や免疫力が落ちていたりする人の場合、細菌の増殖によって危険がおよぶことがあります。  また夏場には、高い湿度と温度によって病原体が繁殖すると、健常者でも危険な状態になりかねません。ですから夏場には1日に3回ぐらいはラップを外し、水分過多の場合にはそれを拭き取り、新しいラップに取り換えることが必要です。冬場であっても、1日に1回はラップを換える必要があります。


また、湿潤療法という考え方はまだまだ新しく、ご存じない保護者もいらっしゃいますので、もし児童・生徒に湿潤療法を施した場合には、保護者の誤解を防ぐためにも、きちんと説明することが大切です。


なお、小さくても深い刺し傷や、動物にかまれた傷、異物が残っている傷などでは、医療機関を受診した方が良いでしょう。



リンク

神戸逓信病院

NPO湿潤治療(モイストケア)を推進する会

小学館

新しい創傷治療